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第45回


高橋幸司

有限会社高橋幸司の事務所取締役社長。価値負けしない店・人づくりマン、中小企業診断士。お客様に「あなたの店がないと、私、困っちゃう」と言わせる、存在価値で負けない店づくりを志向。商売大好きオーナーの店だけを一所懸命コンサルティングするかたわら、社員教育、マーケティングセミナー、創業塾、各種講演、執筆、ラジオ出演もどんど んこなす。
1966年福島県生まれ。

「守破離」
 今日のテーマは、守破離。ご存知、千利休だ。先週の金曜日に、学校の先生と対話する機会があった。教育現場では、生徒の個性を引き出すことが、大きなテーマになっているらしい。教員である彼は「自由に」とか「型にはめない」という言葉を連発していた。多くの人は、ごもっともな教育論に思うだろう。しかし、私は違った。「型にはめたほうがいい」と思っている。
 私達が自由を感じるのはいつだろう?多くは、不自由を経験した後だ。例えば、徒歩で行くしかない環境に育った人が、自転車や自動車を知る。そして好きな手段を選んでいいとなった時に、自由を感じるものだ。仕事も、始めは型にはまってる方が、とりかかり易いはず。とりあえずやってみると不満が出て「こうした方がいい」と、型を外れた意見が出易くなるものだ。逆に始めから自由にやって良い、と言われると、ものさしが無い分、戸惑ってしまうことも少なくない。

 私自身、今は独自のマーケティングルールを駆使してコンサルティングをしているが、先駆者のマーケティング理論を知らずに、または、始めから無視してルール化を進めてきたわけではない。中小企業診断士の資格試験を通過する時に、一通り勉強済みだ。資格取得後、コンサルタント業をスタートさせると、理論が全て現場で通用するわけではないことに気づく。「机上の論理にすぎない」とはこのことだ。そこから、初めて、独自のルールを作り始めた。思えば、先駆者の理論、つまりはじめの「型」がなければ、自由な発想でルール化を進めることができなかったと思う。そして、型を破ることの醍醐味も体験出来なかったはずだ。
 守破離に置き換えると、先駆者の考えを学ぶのが守。華道の真副体もこれに当るだろう。基本にとらわれずにかたを破るのが破。さらに、ほとんど異なる独自の考えを確立するのが離。こちらは、フラワーアーティストとして世界で活躍するTVでおなじみのカーリーだ。

 こんな事例もある。従業員50名の会社でのこと。社長には優秀な義理の息子がいた。彼を即、専務として社内に招いて自由にやってくれ、どんどん変えてくれと指示をした。会社の大小にかかわらず、これはほとんどうまくいかない。後継者に対して、いきなり破・離はムリなのだ。一方、いくら優秀な息子でも、倉庫番から始めてもらう。外回りも新卒と同じく営業車で。古参の幹部のアシスタントをさせる。こうすれば、社内も社外もよく見えて、基本を学ぶ事ができる。これが守だ。すると「これはおかしい、私ならこうする」と破・離も容易になる。あなたの会社の守破離のバランスはどうだろう?自由な発想を求めるなら、1度「守」に徹してみるのも悪くない。