福島市でパンやお菓子の製造販売を手掛けている銀嶺食品工業株式会社は、昭和28年の創業以来、地域の学校給食用パンの製造を一手に担う役割を果たしてきました。現在、学校給食用パンの製造を続けながら、「主食として食卓に上る日本オリジナルのパン」の開発と啓蒙を進める「地ぱんプロジェクト」を強力に推し進めています。その原動力となっている大橋雄二社長を訪ね、福島から世界を視野に入れた食文化への壮大なチャレンジとも言うべき活動についてお聞きしました。
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[大橋雄二さんの略歴]
昭和31年福島市生まれ。6歳のとき血友病と診断され、10代のほとんどをベッドの上で過ごす。闘病を続けながら中学を卒業、高校進学を断念して独学で英語を学び、自宅に集まった学生らに寝たきりの状態で英語を教える。壮絶なリハビリによって寝たきりの状態を克服するも、昭和56年、転倒による骨折が原因で左足を切断。再びリハビリを繰り返して社会復帰を果たす。昭和57年に銀嶺食品工業に入社。平成15年、代表取締役に就任。
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■新たな道はパンの常識を覆すことから始まった
左足を切断した後、リハビリをしながら社会復帰を目指していた私は、親父が経営していたパン製造会社で仕事をすることになりました。その頃、大手製パンメーカーが福島県に進出してくるなど、会社を取り巻く環境は大変厳しいものがあり、決して予断を許す状況ではありませんでした。親父や従業員を助けるために、他では真似のできない何かを生み出そうと考えていたとき、自分が病気を治したい一心で実践していた食事療法がヒントを与えてくれました。米は精製せず玄米のまま、野菜は皮付きのまま丸ごと食べる、いわゆる白いものを一切食べない食事法です。それは、従来のパンの常識を根底から覆すことに繋がることでしたが、「これしかない」という信念が私を突き動かしました。ここから「地ぱん」を生み出す取り組みが始まりました。
■食卓で日本の良さを伝えられる「日本のパン」を創りたい
私は、10代のほとんどをベッドで寝たきりの状態で過ごしました。高校進学の夢も断念しなければならなかった私は、アメリカへの憧れもあって独学で英語を学びました。おかげで人に教えることができるレベルまで上達し、予備校の教壇に立たせていただいた時期もあります。アメリカへの好奇心一辺倒だった私が、比較のために日本についても研究しはじめ、自分が今まで気づかなかった日本の素晴らしい文化や伝統に次第に目覚めていったのです。日本人が古来食べ続けてきた小麦、大麦、米、芋、大豆などは、健康食としても評価が高く、何より私達日本人が最も身近に感じる素材です。これらの素材を活かしたオリジナルの「地ぱん」を開発して世に送り出し、食卓で日本の良さを再認識してもらいたいという私の思いが込められています。食べた方に「おいしいね」よりも「ほっとするね」と言っていただけることを目標としています。
■全身全霊を捧げて取り組む「地ぱんプロジェクト」
「地ぱん」を通じて日本の素晴らしさを広めようとする私の活動は、日本製粉さんとの業務提携による「地ぱんプロジェクト」のスタートによって更に強力に展開できると確信を持っています。自分達が持っている能力や資源だけでは、ある段階までで止まってしまいます。私の考えに協賛してくださる全国の方々の力をお借りすれば、その拡がりは無限大となります。うれしいことに、アンパンマンの作者であるやなせたかしさんが私の活動に賛同して下さり、「地ぱんマン」のキャラクターを作ってくださいました。これからのプロジェクトの推進にとても心強い味方となります。「たかが福島のパン屋が何を大層なことを...」と思う方もいらっしゃるでしょう。若い頃、私はベッドの上にいることしかできませんでした。ベッドから一歩踏み出すことができれば、そこは福島でも宇宙の彼方でも私にとっては同じフィールドなのです。生きることを許されているかぎり、私はとことん夢を追いかけますよ。
■取材者から
はじめて「地ぱん」を食べてみました
「ライスキー米と麦」(5個入り525円)
手に取ると適度な重みがあり、表面は濃いきつね色の中に麦の粒が散りばめられている。袋に書いてあるように、オーブンで少し焼いてから食べてみる。一口かじるとかなりの歯応えがあり、麦の「プチプチ」と米を練り込んだ生地の「モチモチ」が一体となって口に拡がる。普通にバターをつけてもいいが、味噌や醤油をつけて食べても絶妙な味。今度は和風のおかずと一緒にぜひ食べたい。
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大橋社長は終始笑顔でたくさんのことを語って下さいました。この誌面ではとてもすべてお伝えすることはできません。社長のお母様が、大橋家と銀嶺食品の歩みを綴った本が出版されましたのでご紹介します。
大橋康子 著
〜銀嶺パン大橋雄二の物語〜
「生きぬいて命のパンをつくって」(家の光協会)
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[企画課:鈴木道雄]
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