単客管理。この言葉を初めて聞く方も多いはず。単品管理と一字違いだが、顧客に卒業されない店づくりのキーワードだ。早速だが、私が行きつけの店に行かなくなった話をしよう。あれは、肉と野菜とお気に入りを買いに行った時のことだ。
食品スーパーを想像してほしい。私はお気に入りを求めて、店内右奥のナッツ類やドライフルーツコーナーに直行。いつものように、棚の左上から商品に目を走らせて、異変に気づいた。バナナチップ、レーズン、プルーン、あれ?ピーナッツがない!そう、お気に入りとは450g入りの殻付ピーナッツだった。今度は、視野を広げて、棚全体を見回してみた。バターピーナッツ、カシューナッツ、アーモンドはあるが、やはりお気に入りが無い。品切れかも?と値札を探してみるが、やはり無い。あきらめ切れず、今度は店中央の菓子コーナーに直行してみるが、無駄だった。仕方なく奥の精肉コーナーでひき肉をかごに入れ、入口付近の青果コーナーに逆戻り。キャベツ、ニンジン、玉ねぎなど、レギュラー商品を追加してレジに向かった。今日の支払は1500円ちょっと。
POSレジ、つまり単品管理の弊害だと思う。ファンが多い商品は続投だが、そうでない商品は速やかに降板となる。私のお気に入りのピーナッツはファンが少なかったらしい。このピーナッツ事件を契機に、私はこの店に行かなくなった。別に引っ越したわけでもなく、店を嫌いになったわけでもない。単に、この店を好きな理由=長所が無くなっただけだ。
単品管理で何が売れているか判っても、誰が買っているか判らない。今まではこれで良かったが、これからは違う。顧客に卒業されないためには、誰が買っているか、という単客管理が必要になるだろう。単客管理が出来れば、一人ひとりの顧客の好みが分かる。好みが分かれば、いくら単品管理で死に筋でも、この顧客を失いたくなければ死に筋を強いてカットしない、という選択肢も生まれる。
私は1回に1500円の買物だから年間数万円をこの店で使う顧客。ピーナツ事件で私一人が店を卒業しても、店のダメージは少ないだろう。しかし、年間数十万円、数百万円の顧客ならばどうだろう。実際私の周りで、いつも買っていた1枚198円の工場直送チョコレートが無くなっただけで、車で10分の食品スーパーに行かなくなった主婦がいる。彼女の場合も、その店が嫌いになったわけではない。お気に入りのチョコレートは、おそらくPOS上、死に筋だったのだろう。このチョコレートが売場から消えると同時に、彼女がこの店を好きな理由も消えてしまったわけだ。
彼女は7人家族。一回の買物で1万円以上買うことも多かった。単品管理で、たった198円のお気に入りを削除しただけで、年間数十万円の売上を失う。この店も、選ばれる理由を自ら絶ち、顧客に卒業されてしまったのだ。
多くの店は完成度が高く、短所は少ない。繰り返すが、顧客の店選びの基準は、店を好きな理由=長所があるかどうかだ。短所が目に付いた時に店を卒業するのではない。長所が無くなった時に店を卒業するのだ。