昭和25年に郡山市中心部で開業した株式会社高島書房は、すでに50年以上の歴史を持つ老舗の書店である。昭和60年には、郊外の幹線道路沿いに「高島書房 久留米店」をオープンさせた。その当時、駐車場を完備した郊外型の書店は他に類が無く、多方面から注目を浴びることとなった。最盛期には3つの店舗を構えていたが、現在は店舗を久留米店だけに集中し、店売りと外商を行っている。昨今、メディアレンタル部門と複合した大型書店が続々と進出する中、書籍の販売に絞って力を集中し、固定客を増やし続けている。専門店とは本来どうあるべきか、直球勝負で顧客満足を追求し続ける専務の高島瑞雄さんに訊いた。
■売上の7割を占める外商が基礎となり、店売りが発展を促進する
店舗を構える書店の通例を考えると、売上構成比が(外商)7:3(店売り)という比率はかなり特殊なケースだと思われる。外商の得意先は、病院や学校など、多くの職員が勤務する組織が多く、その一人一人がそれぞれ重要な顧客となっている。多くの顧客から注文を受け、定期的に集金をしなければならないわけだから、その手間も相当大変なものになると想像できるが、「注文は専用の用紙に書いてもらって集めるだけ、集金は口座引き落としで確実にいただいています。現金での集金はほとんどありません」と高島さんは言う。 そこまで合理的な仕組みを築くことができたのは、顧客の要望に真摯に応え続けてきた高島さんのたゆまぬ努力の賜物ではないだろうか。
これだけ外商での売上が見込めれば、店舗を構えずに外商だけに集中してもよいのではないかと思うが、「本の魅力を多くの方に伝えていくためにはきちんとした店舗が必要です」という。外商での安定した売上基盤と、小売店舗での本に対する様々な情報収集が、お互いに相乗効果を生み出して良い環境を作っていると考えられる。
■スタッフに求める「脱マニュアル」のサービス
高島書房には、スタッフ用に明文化された「サービスマニュアル」が無い。「本当のサービスは、その時お客様が何を望んでいるのかを敏感に感じ取り、自分で考えて最大限の対応をすることなので、マニュアル化ができないんです。現場では日々様々なケースが発生しますので、翌日のミーティングでみんなで確認し合うことで意識を高めるようにしています。お客様がそれぞれ感じる満足度というのは個人差がありますからなかなか 難しいものがあります。だけど、自分がお客様の立場となって考えた場合に、『こういうことをされたら嫌だなと思うことは絶対にしないように』と教えています」と高島さん。
クレームに対しても独自の感覚を持っている。「お客様からクレームが寄せられた場合には、真っ先に『申し訳ございません』と謝ること。クレームには様々なケースがあり、お客様の勘違いによるものもたくさんあります。そんなときでも、『お客様を勘違いさせてしまったのは店側の説明不足が原因』と積極的に捉えることで、クレームは逆にプラスに転じます」と言い切る。
■書店は大きければいいというわけではない
高島書房久留米店は、約72坪の書店である。オープンした昭和60年当時は、決して「小さな店」ではなかった。しかし、巨大な売場面積を誇る大型書店が次々と誕生した今では、相対的に「小さな店」の部類に入る。「書店は大きいほうが便利というのは錯覚です」と高島さん。実は私も、「大きな書店のほうがバリエーション豊かでたくさんの本があるから便利」と錯覚していた一人である。商品を買うパターンは二つに分けられる。「買いたい商品が決まっている指名買い」と「売場で惹かれた商品を買う衝動買い」だ。これは本を買うときにも当然当てはまることで、たくさんの本を大きなスペースで陳列できる大型書店の場合は、「衝動買い」を誘発するという点では長けているといえる。 しかし、「指名買い」の場合はどうだろうか。大きな売場から買いたい本を探し出すのは大変で、さんざん探し回った挙げ句見つからない場合には「取り寄せ」を頼むが、いつ入荷するかはっきりしない場合が多い。高島書房では、「注文を受けた本は一週間以内に届くように手配すること」が原則となっている。注文を受ける場合には、必ず客の住所・氏名・連絡先をきちんと確認し、内金を受領した上で預り証を発行する。そうすることで、店と客の双方による受注契約が成立したことをお互いに認識し、信頼できる良い関係を長く保ち続けることができるという考え方が前提となっている。
■目指すのは究極の「本屋」
「究極の顧客満足を得ることができる書店とは、来店したお客さんが、求める本をすぐに見つけて購入できる店です」と高島さんは断言する。そのためには、スタッフ全員が最新の情報を共有し、本を手に入れやすい売場を造り、ニーズに合わせた対応ができる環境が必要となる。高島書房では、レジカウンターとは別に「サービスカウンター」を設け、本の購入に関するあらゆる相談を受けて対応している。例えば、欲しい本の情報が完全ではなく、「作家名は分かるのに、本のタイトルがわからない」という場合には、導入されているオンライン検索システムから探す。それでも見つからない場合には、インターネットなどの他の手段を使ってでもなんとかして探し出そうとする。そこには、「本に関する相談には100%応えたい」というプロ意識が満ち溢れている。
最後に、「e−book」などのデジタル技術による新しいサービスについてお聞きした。「パソコンや携帯で見るものは『データ』であって、『本』とは言いません。両目で捉える活字のバランス、ページを手繰る音、紙の手触りや匂い、これらが融合して一冊の本となっているのです」と高島さん。「最高の本屋を目指します」という言葉に、専門店の強い心意気を感じた。
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